株式会社アンドパッド(本社:東京都千代田区、代表取締役:稲田武夫、以下アンドパッド)は、住宅業界において「2025年ショック」と呼ばれる2025年4月から施行となる「4号特例見直し」及び「省エネ基準適合の義務化」への認知及び業務への影響に関して、住宅業界従事者1,030人を対象に調査を実施しました。
その結果、1現場あたりの各作業(事務作業や設計、施工管理など)は、それぞれ平均3~12時間の増加が見込まれ、各企業の幅広い部門で業務量の増加が予想されました。また、増加見込みの業務に対し、約半数がDXが重要であると回答し、DXによる各種の業務効率化が求められる結果となりました。
■住宅業界の「2025年ショック」とは
2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され「2024年問題」への対応を迫られている建設業界ですが、特に住宅業界においては2025年4月より更に業務を圧迫する、以下2つの法改正があります。
①「4号特例見直し」とは
審査省略制度(4号特例)とは、建築基準法第6条の4に基づき、建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物(建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物)において、建築士が設計を行う場合には、構造関係規定等の審査が省略される制度です。
2025年4月より、現行法で4号の条件に適合する木造2階建て以下、高さ13m以下、軒高9m以下、延床面積500㎡以下の建築物は、2号または3号に区分されることになります。さらに、300㎡超の建築物は許容応力度計算が義務化されます。この変更により、工務店やリフォーム会社の業務に影響を与えると言われています。
②「省エネ基準適合の義務化」とは
「省エネ基準適合の義務化」とは、2025年4月より原則すべての新築・増改築住宅に対して省エネ基準適合(断熱等性能等級4以上かつ、一次エネルギー消費量等級4以上)が義務付けられることを指します。建物の省エネ性能に対しての評価と厳正な審査が全物件で実施され、一定の基準に達しない建物は建築することができなくなります。
このことにより、建物の省エネ性能を計算し、その品質を保証できるように設計・監理していく必要があります。
今回、「2025年ショック」と呼ばれる上記2つの法改正への認知及び業務への影響に関して、住宅業界従事者1,030人を対象に調査を実施し、下記のような結果となりました。
■ 調査結果
「4号特例見直し」「省エネ基準適合の義務化」への認知と理解
- 「4号特例見直し」の認知は48.6%、理解しているとの回答は29.9%という結果となった(図1)。
- 「省エネ基準適合の義務化」の認知は57.4%、理解しているとの回答は35.7%という結果となった(図2)。
「2025年ショック」が与える業務への影響
- 「2025年ショック」を通じて業務が増加すると回答した人は、全体の半数の50.2%。一方で「わからない」と回答した人は25.1%、現状では自身の業務へどれくらい影響が出そうか判断がつかない人が1/4いることになる(図3)。
- 「業務が増加すると回答した人」は、設計事務所で68%、ビルダーで62%であった。
「2025年ショック」に対する懸念点
- 「2025年ショック」への懸念点としては「業務量が増え、残業が増える(27.2%)」「現場情報の管理が煩雑になる(24.3%)」「お施主様とのやりとり・説明が増える(20.4%)」がTOP3であった(図4)。
- 特に、設計部門では、「業務量が増え、残業が増える」に45.0%が回答、施工管理/工事部門では「現場情報の管理が煩雑になる」に35.6%回答した。
「2025年ショック」における現場の影響業務・時間
「2025年ショック」により、影響が出る業務と時間(1現場当たり)は下記の通りとなった。
以下は、追加で発生する業務に関して、具体的な回答である。
▶︎ 書類作成・確認・申請などの事務作業
【平均:12時間】
- 役所との書類や連絡等のやり取り。(ビルダー/一般事務・営業事務)
- 検査書類等の書類作成業務。(リフォーム・リノベーション業/経営者・役員)
- 書類関係に目を通す業務。(リフォーム・リノベーション業/大工・職人(会社員))
▶︎ 省エネ・ソーラーパネル・断熱工事関連
【平均:12時間】
- 省エネ機器の選定。(設備工事業/施工管理・工事部門)
- 省エネ基準を満たす建材への入れ替え。(太陽光関連工事業/情報システム)
- 太陽光発電システムへの切り替え。(太陽光関連事業/情報システム)
▶︎ 設計監理業務・設計・設計図書に関する業務(図面確認含む)
【平均:11時間】
- 仕様変更に伴う設計図と仕様書の確認。(設備工事業/施工管理・工事部門)
- 耐震基準と4号特例との突合せによる設計の見直し。(設計事務所/設計)
- 仕様が変わる可能性があるので、図面の確認に時間がかかる恐れがある。(ハウスメーカー/その他)
▶︎ 検査業務
【平均:11時間】
- 中間・竣工検査の書類整理と作成、検査対応業務。(設計事務所/設計)
- 検査工程の日程調整。(ビルダー/プランニング・測量・積算)
- 厳密な工程管理と検査立会。(ハウスメーカー/施工管理・工事部門)
- 仕様変更に伴う追加の検査。(設備工事業/施工管理・工事部門)
▶︎ 施工管理業務(工程管理・品質管理・原価管理・安全管理)
【平均:10時間】
- 基準に適合する施工かの現場確認。(太陽光関連工事業/法務・知的財産)
- 規格内寸法の資材が使用されているかどうかの確認。(リフォーム・リノベーション業/大工・職人(会社員))
- 法令を遵守出来ているか確認しながらの作業になりそうなので、時間がかかると思われる。(工務店/財務・会計・経理)
▶︎ 写真に関する業務(写真管理など)
【平均:5時間】
- 関連部分の写真撮影。(リフォーム・リノベーション業/設計)
- 写真を細かく撮る必要性がある。(ビルダー/設計)
▶︎ 施主への説明業務
【平均:3時間】
- お客様への説明(ビルダー/営業・営業企画)
- お客さんとのやり取り(その他/その他)
- 施主への説明のための営業同行。(リフォーム・リノベーション業/設計)
▶︎ その他
- 特例に適合する旨のエビデンスの取得作業。(その他/一般事務・営業事務)
- 協力会社の社員に施工内容を共有して認識を合わせること。(内装工事業/人事・労務・総務)
- 下請け業者の人手手配。(リフォーム・リノベーション業/経営者・役員)
「2025年ショック」におけるDXの重要性
- 2025年4月から変更になる制度対応により増加する業務への対応として、全体の約半数(46.0%)がDXを重要と考えている(図6)。
- 特にハウスメーカー(59.2%)や設計事務所(56.3%)のスコアが高い結果となった。
- 職種別には、営業/営業企画・設計・施工管理/工事部門・人事/労務/総務において約半数以上の人がDXが重要と回答した。
DXにより改善したい業務・課題
- DXにより改善したい業務・課題は、「提出する書類などの作成業務(27.4%)」や「工程の調整(24.2%)」、「現場の撮影や整理(22.9%)」「現場情報の管理業務(22.7%)」が高い結果となった。(図7)
- 特に、太陽光関連工事業では「提出する書類などの作成業務」(41%)、「工程の調整」(38%)も高い結果となった。
DXを進めるために必要なもの
- DXのために必要なものは、「誰でも使いやすいITツールやシステムであること」(37.3%)と「『協力会社』に対する説明会・サポートが手厚いこと」(21.1%)が高く、DXの導入・理解のしやすさが重視される。(図8)
■ 最後に
「4号特例見直し」「省エネ基準適合の義務化」への住宅産業への影響としては、設計業務への負担増が懸念されていますが、本調査により設計業務だけでなく、営業スタッフや施工現場、検査スタッフなど様々なポジションで業務への影響があることがわかった。また、1現場当たり、各業務平均3~12時間の業務増加が見込まれる結果となった。
約半数の方はDXが、業務効率化に対して重要であると認識している。DX推進にあたっては、ツールを導入して終わりではなく関係者全員での認識合わせが必要になる。ツール選択にあたっては、誰でも使いやすいものであることやサポートが手厚いことなどをポイントとしつつ、DX推進のパートナーとして付き合える存在を見つけ、着実に取り組んでいくことが重要と言えるだろう。
ANDPADは、施工管理を効率化する機能にとどまらず顧客管理や原価・粗利管理、受発注管理など建設会社の基幹システムとして活用いただけるよう多彩な機能を備えております。制度変更等により業務量は増加傾向にある一方で人材不足や残業時間の上限規制対応など課題も抱える住宅産業に貢献できるよう様々なサービス開発を進めております。
今後もアンドパッドでは、建設業界に特化したサービス提供を通じ、建設DXの推進による業界課題解決に貢献して参ります。
■ ホワイトペーパーのご紹介
調査結果をさらに詳細にまとめたホワイトペーパーをご用意いたしました。
下記よりダウンロードください。
住宅業界の「2025年ショック」調査レポート
4号特例見直し& 省エネ基準適合の義務化、2つの法改正に向けた現状を探る
URL:https://andpad.jp/downloads/2025shock
■ 調査概要
「2025年ショックに関する調査」
・調査内容:建設業の「2025年ショック」における認知・対応状況の把握、残業時間、対策と課題
・調査方法:インターネット調査
・調査主体:株式会社アンドパッド
・調査時期:2024年4月
・調査対象:20〜69歳の住宅業従事者
・有効回答数:1,030件
※調査データを引用する際は、引用元の明記をお願いいたします。
例:「2025年ショックに関する調査」(2024年:アンドパッド https://andpad.jp/)
■ ANDPADについて
「ANDPAD」は現場の効率化から経営改善まで一元管理できるシェアNo.1※クラウド型建設プロジェクト管理サービスです。2016年に提供を開始し、直感的で使いやすさにこだわった開発と導入・活用への徹底したサポートで、利用社数20.2万社を超えています。国土交通省のNETIS (新技術情報提供システム) にも登録され、51.0万人以上の建設・建築関係者が利用しているクラウド型建設プロジェクト管理サービスとなっています。
※『建設業マネジメントクラウドサービス市場の動向とベンダシェア(ミックITリポート2023年10月号)』(デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ)